鉄道書籍は実に様々なものが発売されています。
満遍なく且つタイムリーに情報を得るならば月刊誌の購読が手っ取り早いかと思いますが、私鉄に特化して好きだという私のようなファンには毎号ボリュームがありすぎ、とても知識が追いついていきません。

これから紹介する書籍は、月刊誌とは異なり図鑑のような構成をしていますが、内容も広く浅くまとめられているため読みやすくなっています。サクッと情報を得るのにはとても効果的な本です。

古い本もあるためすべて新品で購入することができず、いくつかは中古価格の方が販売定価よりも高くなったものもあります。

保育社より発売された、カラーブックスの”日本の私鉄シリーズ”です。
現在は保育社の方が存在しないため書店で見る機会も激減しました。内容は写真、文章が平均的に載せられているので、わかりやすく面白みがあります。

確認できただけでも31巻以上あり名鉄はCになります。発刊年度の違いで表紙は異なりますが、中身に差異はありません。7500系が表紙のものは昭和56年初版、右の7000系白帯仕様車は昭和59年の再版になります。白帯車の登場が昭和58年なので、最新車両として表紙だけ変更を加えたようです。パノラマカー全盛期に発売された今となっては貴重な本。

また、7700系は白帯なしのスカーレット4両編成で紹介され、現在6両固定編成となっている豊田線100系も開通当時の4両編成で掲載されています。3400系いもむし電車はスカーレット4両時代が紹介されてはいるものの、旧型車のサボはどれも種別版が使用されておらず、ローカル運用に充当していた末期の姿が掲載されています。

下の表は本の中で紹介されている車両です。黒字の形式は現在も活躍しています。
赤字の形式は廃車や転籍などで現在の名鉄線内で見られない車両です。

区分 形式
1500V新型車 7500系(パノラマカー)、7000系(パノラマカー)、7700系(セミパノラマカー)、7000系(白帯パノラマカー)8000系北アルプス5000系5200系5500系
6000系、6600系、100系
1500V旧型車 3850系3900系3800系3600・3650系3400系850系800系3550系3880系(旧)3700系3780系3790系
その他 600V車両、モノレール、機関車etc

こちらは、パノラマスーパーが表紙の”新・日本の私鉄シリーズ”です。
タイトルに”新”とつき、定価も500円から620円に値上がりしましたが、巻頭に名鉄の概要と特徴が追加されただけで、構成に大きな変化はありません。

初版は平成元年、全12巻で名鉄はC。
1000系が最新悦特急車両、5700系が新しい高速・急行用車として紹介されていることから、当時はまだ優等車に2扉の概念があったことが伺えます。また、両数により6500系、6800系と別形式を与えるなど新しい試みも始まりました。昭和末期から平成元年にかけて旧型車が急速に置き換えられたこともあり、前作と見比べると車両が近代化した様子が感じられます。

路線図においては、豊田線と地下鉄線は接続されているものの、犬山線と地下鉄線は未接続となっています。また、600V線区も大部分が営業中であったことから総路線距離が500kmを超えていました。
6000系をはじめとする現在の通勤車は再びスカーレット1色の配色となりましたが、当時は3扉車普及期間だったこともあり通勤車のドアは上部が白に塗装されているため懐かしさを感じます。

下の表の7700系、7000系は、現在白帯が撤去されていますが、名鉄線内で活躍していることから黒字で書いています。

区分 形式
1500V特急車 1000系(パノラマスーパー)、8800系(パノラマDX)7000系(白帯パノラマカー)、7700系(白帯セミパノラマカー)、8000系北アルプス
1500V通勤車 7500系(パノラマカー)、7000系(パノラマカー)、7100系、5700・5300系、5500系5200系5000系
6800系、6500系、6000系、6600系、100系、
(旧)3300系
800系
(旧)3700系etc3400系
キハ20・10形(レールバス)
3600・3650系
その他 600V車両、モノレール、機関車など

こちらは”日本の私鉄シリーズ”でも他社版で左から小田急、京急、京阪になります。できることならすべて揃えたいのですが、近所の書店にあった在庫分のみを購入したため、数社分のみが揃っている状態です。
各社ともに発刊年度が異なるため新型車などの内容比較をするのには参考になりません。また巻末にある付録ページの内容も、昔の車両の紹介、鉄道設備の紹介、会社の生い立ちなど筆者によって異なり、京急は立体交差事業のことなどが紹介されています。
名鉄版はこれらに比べると早期に発刊されたため内容が古く、写真も少なめの構成になっています。小田急は30000系EXE、京阪は8000系ダブルデッカー車ではなく9000系が表紙になっていることから、新型車を表紙に採用している傾向があるようです。


また、”日本の私鉄シリーズ”には、ローカル私鉄を対象とした私鉄ローカル線というタイトルも存在します。新潟交通、蒲原鉄道、栗原電鉄など惜しくも廃線となった数々の路線、車両が紹介されています。発刊は廃線前ですので本の中では旧型車が元気に活躍している姿を目にできます。
これらの車両も鉄道コレクションという形で鉄道模型に登場するようになりました。良い時代、懐かし時代とも感じる方が多いのではないでしょうか。
近年は、ローカル私鉄といえど大手私鉄から高性能車が譲渡され、特別古い車両というのは減りつつあるように思います。また、こういった私鉄を紹介するより、廃線探訪などをタイトルとした書籍を頻繁に目にするようになりました。

少しずつ歴史は刻まれているようです。

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